夢/片思い

一昨日、昔好きだったひとが夢に出てきた。

わたしはそのひとのことを結構長いこと好きで、いわゆる思春期の恋心のほとんどをそのひとに捧げたといっても過言ではない。片思い。相手から見向きもされないのにそれだけ長いこと好きでいられたなんて、一途と言えば聞こえがいいけど、執念深いというか妄想たくましいというか、感心するやら呆れるやらなんだけど、当人はいたって深刻だった。別々の学校になってしまい、ほとんど会えなくなってからはますます深刻だった。ただでさえ彼が最高の男の子だと思っていたのに、会えない時間がわたしのなかの彼の像をどんどん美しく完璧なものに磨いていく。そうしてできていく彼の像が、自分でつくりあげた虚像にすぎないということはさすがにわかっていて、でもわかっていてもその虚像から逃げられなかった。

今は何をしているのか知らない。もう10年以上会っていないし、わたしも彼も地元とのネットワークが希薄なせいかSNSにも出てこない。

夢の中でも、わたしは彼に片思いだった。席替えで隣の席になって、ちょっとだけおしゃべりをした。現実では一度も隣の席になったことなんてなかった。わたしの言ったことに笑う顔を見て、好きだな、と思った。そういえば、長い片思いのあいだにも、両思いの夢を見たことは一度もなかった。元気でいてほしい。