夏の思い出

夏になると思い出すのは通学路、プールの後のぼわんとした脳みそとまだ乾いていないのか早くもかいた汗なのかよくわからないけれど濡れている髪の毛、下を向いて歩くと顎から水滴がぽたぽた落ちてアスファルトに濃い染みを作る。顎に来る前の源流はどうやら耳の上こめかみあたりで、だからやっぱり汗なのかも知れなくて、でもそれは地面に落ちたそばから蒸発していき詳細不明。陽炎なのか視界が本当に揺れているのかさだかでないくらい暑い、太陽が露出した二の腕、首筋をじりじり焼いており、黄色い通学帽越しにもその熱をしかと感じる。蝉がみんみんみんみんわしわしわしわし鳴いている。うつむきながら歩いているから帽子の白いゴムがぶらんぶらんする、口にくわえて舐めて吸ってみるとしょっぱい味がした。蟻の行列を見つけて立ち止まり、それの行方を確かめようと後をつけて行ったら不意に背後から大きなチリリン!驚いて歩道に飛びのくと自転車に乗ったお爺さんが何か罵るようにこちらへ叫びながら通り過ぎていくけれど何を言われたのかわからない、わたしは尻もちをついていて、土を払おうと手のひらを見ると蟻が数匹死んでいた。