十月十日/気分の振り子

もうかれこれ10ヶ月切っていないのだから当然なんだけれど髪が伸びた。ずっと散髪をしてくれていた妹が去年留学してしまったのと、体調を崩して以来美容院へ足が向かないのが重なって、もう何年も耳下で常に切りそろえていた髪の毛が、気づけば鎖骨のあたりまで伸びている。たしか以前この日記にも書いたけれど私は長い髪が似合わない。加えてアレンジ技術が皆無のため、夏の間はずっとゴム一本ですべての毛をかき集めてひっつめる髪型をしていた。昔は髪を全部あげておでこも出すなんて、顔の形的にも造形的にも合わないから絶対嫌だと思っていたけど、三十になった今、鏡の中に映っているまるで開国直後の志士みたいに勇ましい一本結いの女の姿はそんなに悪くないなと正直思う。ただし下ろすとやっぱりだめ。何度角度を変えて見ても、似合わんなあと溜息が出る。もちろん伸ばしっぱなしでまともな髪型じゃないからというのも大いに影響しているんだろうけれど。

大学時代の友人が子どもを産んだ。すでに何人かの友人は子どもがいるから今更めずらしくもない話ではあるけれど、新しい命の誕生はやっぱり毎回その都度うれしい。臨月に会っていたので、送られてきたまだふやふやの新生児の写真を見て、この子があのときお腹の中にいた子なのかと妙に感慨深い気持ちになった。十月十日を経て世界にやってきた小さな命を思いつつ、十月十日を経てもなお伸び続ける髪の毛を持て余す。

八月の後半は落ち込むことが多かった。何があったわけではなくて、何も進展がない自分に落ち込んでいた。今はだいぶ上昇して、落ち込んでも仕方がないねというところまで戻ってきた。もうそういう性分だと半ばあきらめてはいるけれど、私はほんとうに振り子のように気分が変わる。良いときもあれば悪いときもある。そういう当たり前のことを、悪いときに気がつけない。

良いときもあれば悪いときもある。だから良いときのことをちゃんと思い出せるように、悪いときもあるけれどいつもそこからちゃんと戻ってきたんだということを思い出せるように、写真を撮ったり日記を書いたりしようと思う。