五時過ぎの電車/バグ

満員電車を避けたくて、この頃は五時過ぎの電車で出勤している。とは言え五時過ぎでも人は乗っている。空いてはいるけど座れはしない。それでも鞄を肩にかけたまま、つり革につかまってリラックスできるくらいのスペースはじゅうぶんにある。乗っている間はたいていイヤフォンを耳に突っ込んでいる。落語を聞いたり音楽を聞いたり。地下鉄は嫌いだ。

今朝家を出たら雪が降っていたので驚いた。雨の予報も知らなかったのであわてて傘を取りに戻った。まだ暗い空からちらちら雪が落ちてきて、でもそれほど寒くはなくて、妙な感じだった。今思ったけれど、妙な感じがしたのは寒くなかったせいではなくて、ここ最近、わたしが勝手に「もうあとは春になっていくだけだ」と思い込んでいたせいなのかもしれない。もうあとは春になっていくだけだったはずなのに雪が降っていたから、おかしい感じがしたんだと思う。「あれ?バグじゃん」と。

バグではない。当たり前だけど。「バグじゃん」と思ったそれは、あくまでわたしの頭の中と世界とにズレが生じただけで、それは世界の側のバグではない。

世界はわたしの頭の中にあるわけじゃないのに、わたしはわたしの頭の中でしか世界を捉えられない。それは別に悲しむべきことじゃない。それについて悲しむとか喜ぶとか、そういうのは無意味だ。なのにそのことがずっと苦しい。