チューリップ/『ムーンライト』

花屋にもうチューリップが出ていて、まだまだ遠いと思っていた春の背中が見えてきたようで嬉しくて、思わず一輪購入した。

チューリップの可愛さは大人になってからわかった。昔はそこまで好きじゃなかった。色のわりにはそっけない花だなと思っていたから。

 

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目が覚めたとき、ちょうどそこだけ朝日が当たって、額に入れられたみたいになっていた。

花を買うのは好きだから、人にも自分にもしばしば買うんだけれども、考えてみるとこの冬は、あまり部屋に花を飾っていなかった。精神的にもこの冬はとてもバランスが悪かったから、そこまで気が回っていなかったんだろう。でもバランスを整えるためにも、花は必要だったのかも。

 

先日、2018年一本目となる映画を鑑賞した。昨年度アカデミー賞受賞作。いじめ、貧困、差別、ドラッグ、同性愛とかなり重いテーマを一挙に扱っているやつだったけど、それらについてメッセージをがんがんに飛ばしてくるタイプの映画じゃなくて、ただそうしたものをあるがままに伝えようとしているという風な物語に好感が持てた。映像や音も良くて、物語と直接結びつかない、むしろ主人公の心情をまるで無視しているようなよく晴れた空とかやわらかい日ざしとか、おだやかな波の音とか、そういう全てによって過酷なはずの物語が静謐で美しいものになっていた。美しいものになっていた、というのは美化されていたというわけではなくて、むしろこの映画はそれらが美化されていないところに美しさがあって、その美しさはとても尊いもののように感じられた。

人生にタラレバは通用しない、だから現実には多くの場合救いがない。でもそんな中でも不意に月明かりに照らし出されるような美しい瞬間が必ずある。生きていくことはしんどいし、自分と向き合うことは苦しい。けど、せめてやさしい人間であろうと思えるいい映画だった。

去年は新しい映画を(わたしにしては)たくさん観た一年で、といっても相変わらず劇場鑑賞はできていないから、新しいというのは新作という意味ではなくてこれまで見たことがない、という意味。今年もその勢いのままたくさん見られたらいいなと思う。